5 21, 2003
ひんぎゃの塩に惹かれ、八島再び

まろやかで後味が良く、すっきりした中にも深みがある塩味スープを忘れることが出来ず、先週に引き続き今週もラーメニスト・トニヤン御用達の店、神田の八島へ。「ひんぎゃ」、とは、「青ヶ島の中央部にある地熱蒸気出口の群れ」のこと。その地熱でゆっくりと結晶化された天然の塩は、青ヶ島の特産品である。

再訪したこの神田の店で、「ラーメニストが集まる店ですよ」と言っていた、トニヤンの言葉を確認することになる。800軒以上のラーメン店を回ったトニヤンが、5指に入るという、八島のもう一つの魅力は、同店に集まるラーメン・コミュニティにもあった。

アジのからし漬け、バンバンジー、レタスのオイスターソース炒め、ひんぎゃの塩で食べる冷やしトマト、といった前回美味しかったおつまみメニューを食べ終えると、ひとつくらいは別メニューにしてみようと、揚げワンタンをオーダー。一日10食限定のこの揚げワンタン、ぱりぱりと香ばしく揚がっていて、縞模様にていねいに表面に塗られたマヨネーズとの相性がバツグン。醤油をつける必要も無く、良いお味。

そして、フィニッシュはもちろん、ひんぎゃの塩でストレートに味付けされた、前回は食べ逃した、「えび塩ワンタンつけ麺」、を頂く。ラーメニスト、トニヤン指摘の通り、微妙にスープに入った青唐辛子が、時々口の中を刺激する。その刺激で、細めだがつるりとして微妙にコシのある麺をするすると頂く。細切りのチャーシュー、シナチクも、ひんぎゃの塩のスープに彩りを添える。熱々のエビワンタンの食感も楽しい。地熱でゆっくり結晶化された伊豆諸島南端の太平洋の豊かな自然が、スープの中に絶妙にまた溶け出しているかの様。

一緒にいった M さんと、夢中になって食べ終え、「ほぉー」っと満足の一息をついた、その時。カウンター席についさっき着席したばかりの、常連とおぼしき人が突然、180度振り向いて、人懐こく話しかけてきた。

「仕上げのスープ、もらうよね?」「は、はい....」「こちらに仕上げスープお願いね!」正直、驚いた。通常、つけ麺屋では、日本蕎麦の蕎麦湯の様に、食べ終わったタイミングで熱いスープをつけ汁に注ぎ足し、美味しいスープを最後まで楽しめる様にしてくれる。心の中で、この店もそれをもらえるかな、と思っていた絶妙のタイミングで、それまですっかり我々に背を向けていたはずの、カウンター席のラーメニストに、心を読まれてしまったのだ。

作務衣(さむえ)を粋に着こなした常連風のこのラーメニストの方は、来店時からその服装もあってタダモノでは無い雰囲気だったが、まさか心眼を持っているとは...すっかりそのタイミングと親切さに度肝を抜かれた。

作務衣のラーメニストはとてもきさくな方で、聞けば文京区関口で造園業を営んで居られるとのこと。その文京区から、通い出した今年初めは2ヶ月間毎日、今でも1週間に二度は八島を訪れて居られる由。

常連ラーメニストに、八島の魅力を問うと、やはりこの塩を、ストレートに使ったスープ作りにある、という。通常は塩をかなり前から溶かしてラーメンスープを作るが、八島の場合は一杯毎に結晶のひんぎゃの塩をスープに溶かし込むのだそうだ。ストレートな塩で、スープや麺、具本来の味もストレートに出てくる。そこが良いのだそうだ。

作務衣のラーメニストのお子さんは10歳にして、もう美味しいラーメンとそうでないラーメンの味を舌で理解するという。さすが、だ。ラーメニストの子は、ラーメニストになるという宿命を、幼少の頃から背負っているのであろう。

しばらくラーメンや神田周辺のうまいもの談義に花が咲いていたが、また別の常連ラーメニストらしき方が二人ほどやってきて、作務衣のラーメニストは上級ラーメン談義のテーブルに席を移した。

正真正銘の、ラーメニスト御用達の店、八島。ここは完全に、当方の神田行き着け店レギュラー・ローテーション入り。トニヤン、御紹介感謝です。

Posted by minami at 5 21, 2003 11:27 PM